「現金のない世界」はこれからこんな順序でやってくる 進む現金レス社会の潮流


「現金のない世界」はこれからこんな順序でやってくる 進む現金レス社会の潮流


 

インド高額紙幣廃止の失敗



フィンテックや仮想通貨が急速に普及したことなどを時代背景として、世界的に高額紙幣の廃止論が浮かび上がっている。たとえば、'16年11月にインドで高額紙幣が廃止された。そしてEUでは'18年末に500ユーロ(約6・5万円)札の新規発行を打ち切る予定だ。



では、日本で紙幣を廃止するとなれば、どれほどのメリットがあるのだろうか。



昨年インドで廃止されたのは、1000ルピー(約1700円)と500ルピー(約850円)紙幣である。インドの1人当たりGDPはだいたい日本の20分の1程度なので、価値としてはそれぞれ日本の1万円札と5000円札よりもはるかに高いといってよい。この2種類がインドで使用されている紙幣の8〜9割を占めていた。



インドでは、偽造紙幣を利用した脱税、そして不正蓄財が横行し、問題視されていた。それに対するショック療法として2種類の高額紙幣が廃止されたわけだが、これらは銀行で新しい紙幣と交換できる。



その交換のために多くの人が銀行に押し寄せたが、当初新紙幣は旧紙幣の3分の1程度しか発行されておらず、インド社会は一時的に深刻な現金不足に陥った。



 



1年が経過した現在、インドの社会実験は失敗に終わったという評価が多い。中央銀行であるインド準備銀行が'17年8月に発表した報告書によれば、紙幣廃止で金融機関に持ち込まれた旧紙幣は15兆2800億ルピー(約26兆1600億円)。これは流通量の99・8%に相当する。結局、不正資金に使われていたブラックマネーも新しい現金に切り替わっただけで根本的な解決にはならなかった。



現金そのものがなくなる!?



また、現金不足が経済に与えた影響も深刻だ。今年4〜6月期のGDPは前年同期比5・7%増で、順調に見えるかもしれないが、ここのところインドは7%程度の成長があってしかるべきだと言われていたので、減速感が否めない。インドの実験を見ると、経済を回すためには十分な現金が必要なことがわかる。



もともと、インドは現金取引の多い国である。主要国における現金の流通の割合は、対GDP比で3〜8%程度であるのに対して、インドは12%程度だ。ちなみに日本は約20%とダントツに高く、安倍政権による異次元緩和が行われる以前からずっと「現金社会」だった。インドの失敗例があるとはいっても、日本は世界と比較して現金に頼る比重が高すぎるので、改善の余地はあるといえる。



実際、いま現金レス社会への移行は大きな潮流になっている。ユーロの例のほかにも、カナダやシンガポールでも段階的に高額紙幣の流通を減らしている。



フィリピンやデンマークでも、電子マネーへの切り替えを推進、中国やスウェーデンでは中央銀行による仮想通貨の発行を研究している。高額紙幣だけでなく、現金そのものをなくそうとする考え方も世界では出てきているのだ。



一方日本では、ようやく今年に入ってから国税納付にクレジットカードが使えるようになったくらいで、現金決済しか対応していない飲食店やタクシーもまだまだたくさんある。新技術の導入があれば経済効果も期待できるため、現金レス社会に向けてより一層の努力をするべきだろう。



『週刊現代』2017年12月9日号より



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